ゲストハウスをつくる

必勝!日本政策金融公庫向け、ゲストハウス事業の「事業計画書」と「収支計画書」の作り方

Balancing The Account By Hand金沢でゲストハウスを経営している吉岡(@riseyoshioka)です。

先日、日本政策金融公庫で創業融資を受けるために、事業計画書収支計画書なるものを作成しました。

はじめて、金融機関向けの書類を作ったのですが、いや大変でした。全24ページに渡る壮大な事業計画書になり、費やした時間は2週間も。

特に収支計画の方は数字が絡むことなので、数字を算出するプロセスに納得感があり、かつ融資に値する事業であることを証明しなければなりません。

いろいろ苦労しながら作成しましたが、もし今後ゲストハウスを開業する方で、日本政策金融公庫の創業融資を受けようとしている渦中の方がいれば、少しでも参考になればよいと思い、このエントリーを書きました。

前半部分は「事業計画書」、後半部分は「収支計画書」の説明になっています。
ちなみに、この「事業計画書」と「収支計画書」は、Udemyの動画講座で公開しており、ダウンロードできる形になっています。
興味ある方は、こちらをご確認ください。
「This is ゲストハウス開業」というゲストハウスの作り方の動画講座を作成しました。

事業計画書に必要な項目

業種業態によって事業計画書に必要な項目は異なると思いますが、自分が営むゲストハウスという宿泊事業では以下に挙げた項目が必要と判断しました。

  • エグゼクティブサマリー(概要)
  • 会社概要
  • 事業内容
  • 市場調査
  • 顧客
  • 戦略
  • 競合調査
  • 自社の強み
  • 開業までのスケジュール
  • 人員計画
  • 改修計画
  • 考えられるリスクと対処法

つぎに、それぞれの項目でどんな内容を書いたか、書いてみます。

エグゼクティブサマリー(概要)

エグゼクティブサマリーとは、事業計画書のまとめです。A4用紙1ページに収まる分量で、読み手に事業内容を一発で理解してもらえるよう作成します。

大切なことは、ただ事業内容が分かりやすく書いてあるだけではなく、読み手の興味を引き投資しても大丈夫だと何となく感じてもらうことでしょうか。

そう感じてもらうことで、サマリー以降に書かれた内容の理解度が深まります、多分。

会社概要

事業母体の説明です。

ぼくはゲストハウスを法人で運営することにしたので会社を設立しました。この項目には会社の理念や設立動機から、資本金、本店所在地、従業員数などを書きました。

事業内容

どこどこの場所で、こんな感じの宿泊施設をやるよという説明です。物件の住所や大きさのほか、物件の写真もたくさん載せました。

もしかしたら、日本政策金融公庫の担当者が「ゲストハウス」のことを知らないかもしれないので、ゲストハウスとは●●な宿泊施設ですみたいな説明があると分かりやすいですね。

市場調査

市場調査とは、そのゲストハウスがある場所に、どれだけの市場規模があるかをチェックする項目です。つまりターゲットとなる客層がどれだけいるかを数字とともに表せば良いハズです。

各自治体で観光統計みたいなのを毎年出しているので、参考にすると良いと思います。金沢のはコチラでした。
金沢市観光調査結果報告書(平成25年)

この市場調査の項目では、以下の内容に分けて細かく分析しました。

金沢にくる日本人旅行者について

日本人と言っても千差万別で、どのような方法でくるか(マイカーor電車)やどこから来るか(関東or関西or中部)、年齢層など色々な切り口でみることができます。

またどの季節に観光客が多くて、どの季節に少ないかを知るのも重要ですね。

金沢にくる外国人旅行者について

日本人と比較して、外国人旅行者の詳しい情報を得るのは難しいかもしれません。一応、どこの国の人が多くて、いつの時期に増えるのかは把握した方が良さそうです。

ちなみに金沢に関していえば、金沢に来る外国人のTOP3は台湾、香港、アメリカの順です。

顧客

上記「市場調査」で調べた市場の中から、どの客層を狙うか考えた結果がこの「顧客」という項目になります。

マーケティングの基本にターゲットを明確にせよとありますが、全ての客層に同時に販売することなんて不可能ですからね。

戦略

「顧客」が決まれば、つぎはその顧客に向けて、どのように販売するかを考えるのが「戦略」です。

マーケティング用語で「4P」というのがありますが、「プロダクト(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」です。

プロダクト

どんなゲストハウスにするのかを決めます。
ドミトリーをつくるのか、個室を増やすのか。共有スペースはあるのか、キッチンは作るのかなどです。

価格

価格を決めます。ドミトリーの1ベッドをいくらで販売するのか、個室はいくらで販売するのかなどです。

流通

どのようなチャネルで販売するかを決めます。旅行会社で売るのか、またはOTAに絞るのか。いやいや自社WEBや電話だけで販売するかなどです。

プロモーション

どのように認知してもらうかを決めます。広告を出すのか、チラシを巻くのか、SNSで投稿しまくるのか、または口コミに頼るのかなどです。

競合調査

競合になりうる近隣のゲストハウスや低価格帯のホテルなどを調べます。そしてそれらの施設の価格や立地、魅力を調べ、考察を付け加えます。

自社の強み

「競合調査」で明るみになった他施設の魅力と比較して、自施設はどのような点で勝っているのかを書きます。

立地なのか、価格なのか、宿の完成度かなどです。

開業までのスケジュール

開業までのスケジュールを具体的に羅列していきます。

設計事務所との打ち合わせや、資金獲得スケジュール、WEBサイトやパンフレットなどの販促用品の準備、改修工事のスタート時期などです。

人員計画

誰と誰がどの時期から、どのようなことをするのかを書いていきます。人手は足りているのか、繁閑時期に合わせた計画なのかを明確にします。

改修計画

具体的な改修計画を書きます。

ゲストハウスを開業する場合、多くは古い建物を利用することになり改修は必至かと思います。そこで、どのような場所をどのように改修するかを間取り図とともに説明します。

考えられるリスクと対処法

想定外のことが起こってしまうのが、ビジネスの常。特にお客様商売のゲストハウス事業では、予想もしなかった出来事が起こる可能性も。

そのようなコトを避ける為にも、ネガティブ要因を挙げどのように対応するかを明示します。

たとえば、ぼくは以下のようなことを書きました。
・想定以上にコストがかかる(特に水道光熱費、灯油代)
・アルバイトスタッフの急な離職
・業務量が多く、人手が不足してしまう

5ちょっと一息。
credit: Yuri Samoilov via FindCC

「収支計画書」に必要な項目

事業計画書に続いて次は収支計画です。収支計画に必要な書類は「損益計算書」と「キャッシュフロー計算書」の2点です。

損益計算書

shushiクリックすると拡大します。

コチラがぼくが用意した収支計画書です。初年度から3年分を作りました。一部の項目については、数字の出し方に苦労したので、そのプロセスを下記書いてみました。

稼働率

どの地域にも繁閑時期があり、誰をターゲットにするかによっても変化します。観光庁や地方自治体が発行している観光白書的な資料を参考に稼働率を見積もります。

宿泊旅行統計調査

水道

ゲストハウスをつくる町にある水道局のWebサイトへ行き水道料金を調べます。その際、一人当たりの水道使用量が分かると簡単に計算できるのですが、ぼくの場合はネットで調べまくり、結果一人当たり1日の使用量は0.2㎥という数字にしました。

ガス

水道と同じように、ガス提供事業者のWebサイトへ行きガス料金を調べます。水道料金と同じようにして、一人当たりのガス使用量は0.4㎥で計算しました。

灯油

寒い地域にゲストハウスを作る場合は当然灯油を使用することもあるかと思います。

ぼくの場合は、以下リンク先のストーブを設置することを念頭に、灯油の値段(1900円/18ℓくらい)と掛け合わせて数字を出しました。
http://item.rakuten.co.jp/athene/4853kmtd/

電気

水道・ガスと同じように、電気提供事業者のWebサイトへ行き電気料金を調べます。

注意しなければならないのは、水道やガスは稼働によって使用量は変化しますが、電気は季節によって変動するということです。夏場はエアコンをフル稼働させるでしょうから。

リネン

業者によって価格は異なると思いますが、シーツや枕カバーなどのリネン洗濯費は200円〜300円くらいでしょうか。

修繕積立金

将来発生する何らかの修繕のために毎月積立をします。ぼくの場合はえいやで2万円にしました。

予約手数料

OTAを通じて入ってくる予約に対して、コミッション(予約手数料)を支払います。じゃらんや楽天などの国内OTAはだいたい10%前後、海外はだいたい12%で計算すればよいかと思います。

各OTAの手数料はこちらのブログのエントリーが参考になります。
旅館・ホテルの経営者必見!各予約サイト(OTA)のアレを分かる範囲で作ってみました!

キャッシュフロー計算書

cashflowクリックすると拡大します。

コチラが用意したキャッシュフロー計算書です。初年度から2年分を作りました。

損益計算書と異なる点は、開始時期です。損益計算書がゲストハウス開業の月から始まるのに対して、キャッシュフロー計算書は会社を設立した月から始まります。

収支計画書を作る際、気をつけたコト

嘘は書かない

融資担当者の心証を良くするため、どうしても計画に希望的観測要素が含まれてしまう場合があります。つまり実現しないような無理な計画を立ててしまうことです。

しかし、相手はプロです。
数字の嘘を見抜かれる可能性もありますし、何よりこの数字をたよりにコレから事業を行っていくので自分の為にもなりません。

実現可能で無理のない計画を立てましょう。(何か消費者金融みたいだな・・)

年度ごとに徐々に良くなっていく

いきなり初年度から爆発的に事業がうまくいって、儲かりまくる可能性は少ないでしょう。

なので、1年目より2年目、2年目より3年目というように、年度を経るごとに徐々に良くなっていくことが大事かと思います。キャッシュが回れば、1年目は赤字でも良いのかもしれません。

キャッシュが不足しすぎるのもダメだし、余りまくるのもダメ

公庫の担当者に取って一番大切なところは、キャッシュが回るのか、ということです。赤字でもキャッシュが回っていて毎月期日通りに返済が行われれば良いのですから。

そこで、キャッシュフロー計算書の毎月の現金残高は特に重要かと思います。ここが返済できない可能性があるほど、ギリギリだと融資を受けるのは難しいでしょう。

一方で、キャッシュが潤沢にあり返済に全然困らないなんていう状態もあまりよくありません。それであれば貸す必要がないと判断されるからです。

目安としては、毎月の売上平均の2倍の現金が残高としてあると良いと、どこかの誰かが言っていました。例えば、毎月100万円売り上げるゲストハウスであれば、その倍の200万円があれば問題ないということです。

終わりに

事業計画書を作成するにあたって、下記のブログを参考にさせていただきました。ありがとうございます。

Backpackers Japan
ゲストハウスの作り方(事業計画編)

ゲストハウスへの道⑤事業計画書

-ゲストハウスをつくる