長野県の、ある温泉街で、温泉旅館をお借りして、ゲストハウスを開業する予定でした。
何度も通い、女将さんとも相談し、お互いに納得できる条件で合意しました。念のため契約の前に、建築士の方に物件の調査を依頼しました。古い建物だったので(築90年ほど)、予想もつかないことが起こると怖かったので。
建築士に見てもらったら、出てきた出てきた、いろいろな問題が。
まず建物は築年数が古いため、既存不適格建物です。
既存不適格は、建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。建築基準法は原則として着工時の法律に適合することを要求しているため、着工後に法令の改正など、新たな規制ができた際に生じるものである。
そのまま使用していてもただちに違法というわけではないが、増築や建替え等を行う際には、法令に適合するよう建築しなければならない(原則)。当初から法令に違反して建築された違法建築や欠陥住宅とは区別する必要がある。
参照:Wikipedia
建築基準法的には、そのまま使用しても問題はないです。ただ宿泊施設の管理者としては、最低限、防火・避難関係は整備する必要があると言われました。
消防設備
「自動火災放置設備」と「漏電火災法設備」および「避難器具」が今回の物件では未設置でした。現在も旅館を営んでいるので、この3つは当然設置済みだと思いきや、、
「自動火災放置設備」と「漏電火災法設備」に関しては、「複合防災受信盤」というものを設置すれば、両方解決します。仮に部屋で火災が発生した時に、フロントでその場所が確認でき、設定によっては消防署にそのまま連絡がいくという優れたやつです。
で、こいつがえらい高い。
もちろん物件の大きさや部屋数にもよりますが、この物件の場合、150〜250万円。
また「避難器具」とは火災発生の際、部屋から屋外に脱出するための梯子などを指しますが、これは約20〜30万円程度とのこと。
電気設備
現状の電気設備は配線・器具ともに古く、漏電や火災の原因になるので、全て更新することを勧められました。
また分電盤(電気を安全に使用するために必要な漏電遮断器(漏電ブレーカー)や配線用遮断器(安全ブレーカー)を1つにまとめた箱)の中に、スズメバチが巣を作っていたー!
で、電気配線は通常や天井や壁の中を通っています。よって新しくするためには、天井や壁などの隠ぺい部を壊したり、剥がしたりする必要があります。だからここにも凄くお金がかかります。
今回は概算で300〜400万円とのこと!
また使用する電力が50kw以上になれば「高圧受変電設備」が必要になり、さらに500〜600万円程度の費用がかかる。
給排水衛生設備
漏水や凍結の心配がある配管の調査、改修工事もしておいた方がよいとのこと。
また現在トイレは汲取式ですが、将来的に下水と接続する場合は、接続工事が必要になる。(下水管を物件まで引っ張ってくる工事)
建築工事
雨漏り箇所および腐朽箇所の修繕も、建物の維持管理上、必要とのこと。
その他
古い建物のため、「現況平面図」がありません。そのため、改装を行うにあたっては、建築士による平面図の作成が必至とのことです。これには約20〜30万円。
古い物件でのゲストハウス開業ってむちゃくちゃお金かかる
というわけで、防火・水回り関係で1,000万ちかく必要なことが分かりました。しかもこの数字は概算なので、実際に現況平面図を作成し、工事を進めていく中で、金額が跳ね上がる可能性もあります。
もちろん、この過程を全て無視し、今の状態のままスタートすることもできます(裏技として、消防局と事前に相談して、長期的には火災報知器を設置するから、今は見逃してくださいという交渉も可能なようですが、、)。しかし万が一火事などが発生し、人の生命に関わる場合は、当然その責任を問われてしまいます。
そして恐ろしいのは、この1,000万円というのは、目に見えない部分。ここからさらにオシャレに改装したり、ベッドや家具など必要なものをそろえていく段階で、さらなる出費が必要です。
どれだけお金かかるんだ、ゲストハウス開業って。。
契約の前に、建築士に物件調査を依頼してください
ゲストハウス用の物件を見つけた際は、ぜひ建築士に一度調査してもらうことをおすすめします。素人が見たら一見大丈夫そうな建物でも、プロの建築士が見たら直さなければならない箇所がある場合もあります。
今回、地元の一級建築士にお願いして、費用は5万円でした。(調査は半日程度。目視による概要確認と写真撮影および所有者へのヒアリング)
調査をせず、いざ改装という段階になって予期しない問題が発生することを思えば安いものです。
と言う訳で、物件探しはまた振り出しです。とほほ
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