ゲストハウスをつくる

他の旅行者と会話したくない人は、ゲストハウスに泊まらないでください。

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ゲストハウス」という言葉を聞いて、普通の人たちは、一体どんな宿泊施設を思い浮かべるでしょうか?

とにかく安く泊まれる宿泊施設?
ドミトリーがある宿泊施設?
外国人が多く泊まっている宿泊施設?

なぜこんなことを書くかというと、ゲストハウスという宿泊形態がまだまだ一般的ではないこの日本で、言葉だけが一人歩きし、本来持つべき意味合いから、いささか遠い所に行ってしまったような気がするのです。

で、それがゲストハウス産業が今後盛り上がるためには、あまり良くないんじゃないかなーという妄想です。

一応、Wikipediaの定義は以下のようになっています。

ユースホステルのように1泊単位で宿泊できるバックパッカー向けの宿をゲストハウスと称している。 「リビングなどの共同場所で他の旅行者と交流が出来る」「キッチン、トイレ、シャワールームなど共同で使用」「ドミトリー(相部屋)がある」などが特徴。

多くの人は、宿泊施設に「交流の場」を求めていないという事実

この「ゲストハウスはどんな宿泊施設?」への問いの答えは、「旅経験の深度」によって異なると思います。

例えば、海外をバックパッカーとして旅行したことがあり、現地でゲストハウスに泊まった経験があれば、「ゲストハウスはかくも、こんな宿泊施設である」と感覚的に理解できます。

一方で、バックパッカーとして旅行したことがなく、ましてやゲストハウスに泊まったことがない人は、ゲストハウスをどんな所だと捉えているのでしょうか?

ちなみに、僕の嫁や周りの友達(旅経験が浅い)にそれを聞いたところ、以下のような解でした。

リア充が出会いを求めて集まる、文化祭的なノリの所
※リア充=リアル(現実)の生活が充実している人物を指す2ちゃんねる発祥のインターネットスラング

少しうがった言い方かもしれませんが、結構核心をついているような気がします。多くの一般ピープル(旅の経験が浅い人)にとっては、ゲストハウスは他者と積極的に交流する必要がある宿泊施設なのです。

ここでポイントは「必要がある」という文脈です。緩いモチベーションではなく、「他者と関わること」が必須条件でなければならないのです。これは普通の人に取っては気後れしてしまうほど、重いコンセプトです。

実際嫁さんも、「何か意識が高そうな人が多そうで、泊まりたくない」と言っています。

なんで、そんな偏った理解になっちゃったの?

本来ゲストハウスが多様なバックグランドを持った旅人を受け入れることができる宿泊施設であるべきなのに、ゲストハウスと名乗ることにより、ある側面をもった旅行者しか集まらず、結果多様性が失われるというパラドックスが生まれています。

なんで、そんな偏った理解になってしまったかというと、1つに「旅館」や「民宿」の存在がある気がします。

日本にある宿泊施設の形態として、ホテルの他に旅館や民宿があります。

ホテルがプライベートな空間を確保できる「固い感じ」の宿泊施設であるのに対して、旅館や民宿はおもてなしを感じられたり、地域の食事や文化に触れられる「柔らかい感じ」の宿泊施設です。

旅館や民宿の宿泊料金には、ゲストハウス並みに安い所もあります。

本来ゲストハウスの定義に内包されるはずの「柔らかい感じ」や「低価格」といった要素が、旅館と民宿にすでに備わっていることで、自然とゲストハウスは「旅館、民宿にはないもの」すなわち、「交流」にフォーカスせざる負えないというのが僕の考えです。

このポジショニングは確かに尖ってて、ある一定数の人には受けるハズです。そして、その限られた人たちだけを集客して、ゲストハウスの経営が成り立てば、まーOKなんでしょうが、問題は

大多数の日本人の旅の目的には、他の旅行者と「積極的に」交わりたいというニーズがないということです。(もちろん消極的なニーズはある)

で、本来ゲストハウスのターゲットとなるはずの、「旅が好きな人」「自然が好きな人」「移住や田舎に興味がある人」「宿泊施設は安く済ませ、食事にお金を使いたい人」で、消極的に交流を期待する人はゲストハウスを避けてしまう可能性が高いんじゃないでしょうか?(消極的なニーズは旅館と民宿が満たしてしまうんですよね。。。)

追い打ちをかけるように、ゲストハウス側も「交流すること」がストロングポイントだと分かっているので、ホームページやSNSで

「場をつくる」
「コミュニティ」
「つながる」

などの流行のキーワードをちりばめ、集客しようとしますが、その背後には、強烈なメッセージを放っていることに気づかなければなりません。つまり、、

他の旅行者と会話したくない人は、泊まりに来ないでください。

もちろん、こんな意図はないと考える経営者は多いと思いますが、これが実際に一般の人が(無意識に)感じ取るイメージだと思います。

外国人がメインターゲットなら、むしろOK

マーケティング視点で考えると、東京や京都などでゲストハウスを経営する場合は、十分な数の外国人旅行者が泊まりにきてくれることが予想できます。その場合はむしろ、ゲストハウスと名乗るべきかもしれません。

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外国人にすればまだまだ、旅館や民宿は一般的ではないですし(〜荘とかね)、そもそも「Guesthouse」という言葉は、現状の日本人の捉え方とは異なります。

ただ、到底外国人が来ないような田舎の小さな街で、日本人相手に商売をしている場合は、ゲストハウスと名乗ってしまうのは、上記の理由からいささかリスクがあると思えてなりません。

最後に

僕は20代の頃、海外に3年ほどいて、ゲストハウスにもよく宿泊しました。なので、ゲストハウスの自由で、いろいろな人が集まっている感じが好きだし、理解しているつもりです。

しかし日本に帰ってきて、ゲストハウスとして語られる文脈が「交流の場」一辺倒すぎて、多様性が失われているような事態が、少しもったいないと感じています。

せっかく新しい宿泊形態としてゲストハウスが登場したのだから、誤解されないように、日本社会に浸透していってくれればいいなと思い、この文章を書きました。

考え過ぎですかね?
むしろ僕の心が歪んでいるから、偏屈な意見になったとか・・

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