BOOK AND BED TOKYOというゲストハウスをご存知ですか?
2015年、東京池袋に開業した「泊まれる本屋」がコンセプトのゲストハウス(ホステル)です。
BOOK AND BED TOKYO
各種メディアで登場し、そのコンセプトの斬新さやオシャレな内装で非常に話題になっています。その人気ぶりのため、予約も取りにくい状況が続いています。
最近は京都にも出店しました。
BOOK AND BED TOKYO Kyoto
このゲストハウスが登場した2015年末に一度泊まりに行ってます。
ググれば、BOOK AND BED TOKYOの宿泊レポートはいっぱい出てくるので、今回はいちゲストハウス経営者としてBOOK AND BED TOKYOが旧来のゲストハウスと何が違うのか、で何が凄いのかをレポートしてみたいと思います。
「BOOK AND BED TOKYO」の凄さ3つ
①ターゲットが旅行者じゃなく、都内のオシャレな女子
ゲストハウスビジネスの主なターゲットは、旅行者です。
日本に観光に来る外国人や、国内旅行の日本人など。
価格の安さを理由に宿泊費を節約したいビジネスマンも泊まりますが、基本は旅行者がターゲットです。
BOOK AND BED TOKYOは違います。
ターゲットが都内のオシャレな女子(オシャレに敏感な?流行を追う?キラキラ女子?)です。
僕が宿泊した際、8割は女性でした。
みんな若くて、オシャレな女性でした。
荷物も少なかったので、東京に観光に来て宿泊先としてBOOK AND BED TOKYOに泊まっているわけではなくて、東京に住んでいるけれどオシャレな場所を体験するためにBOOK AND BED TOKYOに泊まっていました。
僕みたいな地方から来たおっさんは一人もいなくて、なんとなく居心地の悪さを感じました。(自分はBOOK AND BED TOKYOのターゲットじゃないので、居心地の悪さは当然なんですが)
②付加価値が国際交流や出会いじゃなく、「読書体験」または・・
ゲストハウスの特徴は何と言っても宿泊費の安さですが、俗に言われるゲストハウスの付加価値は外国人と交流できることや知らない人と出会える場としての特異性です。
しかしBOOK AND BED TOKYOは違います。
BOOK AND BED TOKYOの付加価値は、「読書体験」です。
運営側の言葉を借りると、
本を読みながら寝落ちできる、そんな至福の「寝る瞬間」
これが付加価値です。
宿泊者がみんな本を抱えて寝落ちする瞬間を味わっていたかまでは定かではありませんが、少なくとも皆さん共有スペースで誰と交流するわけでもなく黙々と本を読んでいました。
付け加えると、
黙々と読書する傍ら、スマホで自撮りしたり、館内の撮影をしていました。
みんなInstagramやFacebookにオシャレな写真をアップしていることでしょう。
BOOK AND BED TOKYOの本来の付加価値というか、見えない提供価値は「素敵な空間にいる私が素敵」です。
③宿泊料金が、並みのゲストハウス料金じゃない
通常、ゲストハウスのドミトリー(相部屋)料金は3,000円前後でしょうか。
閑散期になると、2,000円前後に落ちる街もあります。
BOOK AND BED TOKYOは違います。
BUNK COMPACTという一番小さいベッドは、平日で4,000円、週末5,000円前後。
BOOK SHELF STANDARDという一番大きいベッドは、平日5,000円、週末は6,000円を超えてきます。
もう普通のゲストハウスのドミトリー料金の1,5倍から2倍。それでもひっきりなしに予約が入るわけですから、凄いです。
BOOK AND BED TOKYOの戦略と採算性
物件があって、その物件に合う戦略を見出したのか、
まず戦略があって、その戦略に合う物件を見つけたのか、
どっちが先なのか個人的には気になりますが、
BOOK AND BED TOKYOは明らかに既存のゲストハウスとは異なるターゲットに向けて作られています。
寝るためにゲストハウスに泊まるんじゃなくて、「素敵な体験をしたい発信したい」ために泊まる。スタバにコーヒーを飲みに行くんじゃなくて、素敵なスタバの空間で優雅な時を楽しむみたいな。
このターゲットと提供価値のため、宿泊料金は高く設定できる。
いや、むしろ高いほうがいい。
こうやって書くと簡単に聞こえますが、これをゼロから考えてカタチにするって本当に凄い。これをプロデュースした運営者のR-Store浅井代表は稀代のマーケターですね。
ちなみに、このBOOK AND BED TOKYOの売上をざっくり計算してみました。
ベッド数は全部で32ベッド。
それぞれ料金は違うので、ざっくり1泊ひとり平均5,000円。
かなり予約が取りにくいと思われるので、稼働率は80%計算で。
32(ベッド) x 5,000(円) x 0.8(稼働) x 30(日) =3,840,000円
おまけ:泊まってみて、個人的に勉強になった点
BOOK AND BED TOKYOは雑居ビルのワンフロアを改装したゲストハウスです。一般的な住居を改装したゲストハウスとは異なり、ワンフロアのみのテナントです。
普通ゲストハウスを作ろうと発想したとき、町屋のような一戸建てや、ビル一棟を改装します。1階がレセプションやリビングなどの共有スペース、上層階が客室となります。
共有スペースと客室が階層ごとに別れることによって、ゲストが宿での過ごし方を使い分けられるし、運営側もここはみんなで使う場所、ここは寝る場所とパブリックとプライベートな空間を意図して決めることができます。
しかしワンフロアで宿を作ろうとした場合、このパブリックとプライベートな空間の狭間がすごく曖昧になる。凄く広いワンフロアなら別ですが、BOOK AND BED TOKYOは確か50坪くらいなはず。
なのでBOOK AND BED TOKYOでは、寝る場所である本棚から一歩外に出たら、ソファがあって、他のゲストが本を読んでいる。もうプライベートもパブリックもないわけです。
個人的には、これだけプライベートとパブリックが近接しても大丈夫なんだという学びがありました。
ぼくが金沢で昨年開業したBlue Hour Kanazawaもワンフロアのゲストハウスです。
Blue Hour Kanazawa
終わりに
ゲストハウス経営者からすると、ゲストハウスは旅人のためのものであって、おしゃれ女子が写真を撮りにくるゲストハウスなんて本当のゲストハウスじゃない!なんて気持ちも少なからずあります。
同時に、同じベッドを提供しているゲストハウスなのに、こんなにも違うものが作れるんだという嫉妬に近い感情もないまぜです。自分もこんな事業モデルが作れるよう、もっと学びたいと思いました、
ヒットしている商品には必ず訳がある。
遠巻きでブツブツ言うより、実際に経験した甲斐がありました。
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