旅について

「深夜特急」の呪縛にかかり、「旅」が頭から離れなくなってしまったら、抜け出す方法はたった1つ。そう、それは「旅」をすること。

深夜特急旅に出るきっかけは、人それぞれ。

美味しいものを食べたい。
世界遺産を見たい。
海外の友人に会いたいなど。

僕の場合は18歳の頃、「深夜特急」という本を手に取ったことがきっかけでした。夢中で読み、自分も「深夜特急」のような旅がしたいと思いました。

気づいたら旅の魅力にどっぷりと浸かることに。

こんなにも人の人生を左右する「深夜特急」という本は、世間一般的にはどんな本であったのか。またぼく自身にとってはどんな本であったのか振り返る懐古録的なブログです。

credit: BRJ INC. via FindCC

沢木耕太郎著の「深夜特急」とは?!

1985年に刊行された「深夜特急」は、作家の沢木耕太郎さんの自伝的紀行小説です。

著者である沢木耕太郎さんが「私」という1人称で登場し、インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスで旅をする話です。

物語は、3部構成となっていて「深夜特急〈第一便〉黄金宮殿」「深夜特急〈第二便〉ペルシャの風」「深夜特急〈第三便〉飛光よ、飛光よ」に分かれています。

累計600万部の大ヒット

「深夜特急」は若者を中心に爆発的なヒットとなり、多くのバックパッカーを生んだと言われています。

ぼくは現在30代前半で発売当時の熱狂は知る由もありませんが、新書と文庫本合わせて600万部も販売しているわけですから、ものすごい影響力だったのでしょう。

深夜特急はテレビドラマ化もされた

深夜特急は「劇的紀行 深夜特急」という題名でテレビドラマ化されています。

主演は大沢たかおさん。
出演当時の大沢さんの年齢は、確か沢木耕太郎さんが実際に旅をし始めた26歳。あまり海外を旅した経験がなかった大沢さんが、回を追うごとに本物の旅人になっていく様は必見です。

ちなみに、このテレビドラマで使用された主題歌は、井上陽水さんの「積み荷のない船」という歌。名曲です。

深夜特急のせいで、人生を踏み外した人が多数

良くも悪くも「深夜特急」を読んだことで旅の魅力にとりつかれ、安定路線の人生を捨て旅に出た人も多いです。

ぼくが海外で出会った旅人の何人かも「深夜特急」に触発されたことで、会社員という人生を捨て、旅に出ていました。

旅のバイブルは、深夜特急か、猿岩石か、はたまた高橋歩か、それとも種田山頭火か・・

海外でゲストハウスに泊まっていると、同じように旅行している日本人に出会うことがしばしばあります。

旅のルートや思い出、日本で何をしていたかなど様々な会話を交わしますが、その中で「どんな旅の本が好きですか?」なんて会話が出てくることも。

ある人は、「深夜特急」にはまり、ある人は「猿岩石」に影響を受け、ある人は「高橋歩」に憧れ、またある人は「種田山頭火」のようになりたいと言います。

どんな旅本を読むかで、その人の個性が表れて、とても面白いですね。

深夜特急が、旅のバイブルでなくなる時

ここからは、少し自分の話を。

18歳のぼくは、愛知県の大学に入学し当たり障りのない日常を過ごしていました。高校時代まで続けていたサッカーを辞めてしまい、なんだかハリのない空虚な日々だなと感じていた気がします。

そんな折、個性的な本が並ぶヴィレッジヴァンガード(通称ヴィレヴァン)という書店で「深夜特急」に出会います。魅惑的なPOPにひかれ、「深夜特急」全6巻を購入。帰宅してからは、寝る間も惜しみ沢木耕太郎さんの旅の世界にどっぷりと浸りました。

そして読み終わった瞬間に、旅に出ることを決意し、大学の2年目を休学し1年間の旅に出たのでした。

旅に出る前や旅の初めの頃は、楽しみや期待が高まる一方、自分も沢木さんみたいな刺激的で躍動感のある旅が本当にできるのか非常に不安でした。

実際の旅は、もっと平凡で退屈なんじゃないかと。1年間という貴重な時間を費やすのに値するのか、なんて。

しかし、全くの杞憂でした。

実際の旅は、本の中の旅よりもよっぽど刺激的で躍動感に溢れ、期待以上のものでした。
初めは沢木さんの旅の中で旅をしていた僕は、いつしかそこを抜け出し、「自分の旅」をするようになりました。

考えてみれば当然ですが、実際に自分の足で経験する旅が、本の中で他人の旅をなぞる旅よりつまらないわけがないのです。

もちろん他人からしてみれば、ぼくの旅は特徴的な出来事がなく、平凡でつまらない旅なのかもしれないけれど、ぼくの中では「深夜特急」を超える一大ストーリーになりました。

そしてぼくは、ついに「深夜特急」という名の呪縛から逃れることができたのです。

きっと自分で旅をしなっかたら、いつまでも「深夜特急」が頭のどこか深くに沈殿し、いつまでも事あるごとに沢木さんの旅を反芻していたことでしょう。

「旅は魔物」、「旅は麻薬」。

そこから抜けだす方法は、たった一つ。
そう、それは「旅」をすることです。

深夜特急credit: Moyan_Brenn via FindCC

深夜特急の関連本のご紹介

「深夜特急」や、それに関連する本やDVDの紹介です。

深夜特急 全6巻セット 文庫本

こちらが全巻セットです。

劇的紀行 深夜特急 [DVD]

大沢さん主演の「劇的紀行」。
ちなみに定期的にYoutubeに、誰かが劇的紀行をアップしていて無料で見ることもできます。著作権侵害で削除されているものもあり。。

旅する力―深夜特急ノート

深夜特急の誕生物語や、その舞台裏を描いた長篇エッセイです。

coyote(コヨーテ)No.8 特集・沢木耕太郎「深夜特急ノート」旅がはじまる時

「旅する力―深夜特急ノート」のダイジェスト版みたいな本。
面白かったのは、沢木さんの「猿岩石」への洞察・・・

終わりに

年末年始に少し時間があったので、Amazonで再び「深夜特急」を全巻購入し読み返そうと思いました。

「あの頃の興奮を」ではないですが、しばらく旅から離れているので、もう一度旅の気分に浸りたいな、と。でも1巻目の半分も読まずして投げ出してしまい、それ以上読み進めることができなくなりました。

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